会社に不倫のことを暴露するのは…【弁護士・夫婦カウンセラーが解説】

会社に不倫のことを暴露するのは…

【今回のご質問】会社に不倫のことを暴露したい!

 

数か月前から、夫の残業が多くなりました。

それでも、22時頃には帰って来ていたので、その時は「繁忙期なのかな」とあまり気にしていませんでした。 

 

しかし、先日、友人から夫が女性と食事をしているところを見たと聞かされました。

そこで、探偵に依頼したところ、

なんと夫が会社の同僚の女性とホテルに行っていたことが分かりました。

 

とても許せないので、不倫相手のしていることを会社に暴露したいです。

私は何か罪に問われますか?

 

【弁護士としての回答】

 

名誉毀損罪に該当する可能性が極めて高いです。止めましょう。

 

まず、刑法では、名誉毀損罪について、以下のとおり規定されています。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

刑法第230条1項

 

そして、会社に不貞行為の事実を暴露することは、不特定の人に対して公然と事実を適示し、それによって不倫相手の名誉を貶めるとして、名誉毀損罪に該当する可能性が極めて高いといえます。

 

また、他人の名誉を毀損することは、民法上、不法行為として、損害賠償責任を負うこととなります。

 

具体例を見ていきましょう。

まず、会社に不貞行為を暴露した件で、裁判例は、以下の通り、名誉毀損を認めています。

(会社のお客様相談室へ架電し,不貞関係にあることを告げたことや,会社のお客様ボックスに,不貞行為をしていることがわかる内容の投書をしたことについて)は,被告が不貞行為をしていることを不特定の者に告知するもので,少なくとも被告の名誉を毀損する行為であるといえる。

東京地裁平成25年 1月17日判決

 

また、会社に直接言わず、TwitterやInstagramにより不貞の事実を告げることも、名誉毀損が認められています。

原告による本件アカウント作成等により,被告の勤務先の同僚らが,被告とAの不貞行為を知るにいたったことが認められ,原告による本件アカウント作成等の行為は,被告の名誉を毀損するとともに,被告のプライバシー権を侵害するものといえる。

東京地裁令和 3年 1月27日判決

 

その他にも、取引先や出資先に不貞の事実を告げることも、名誉毀損にあたると判断されています。

不貞行為をした事実は,社会的評価を低下させる事柄であり,そのことを不特定又は多数の者に公表することは,名誉を毀損する行為であるということができる。
そして,被告が本件不貞行為に関する電子メールを送信した相手方は,特定の者10名に加えて,a社の従業員が自由に閲覧することができるメールアドレスを含むものであるから,被告の上記行為は,原告の名誉を毀損するものといわざるを得ない。

東京地裁平成29年 2月24日判決

 

以上からすれば、不倫相手のしていることを会社に暴露することは、原則許されないと考えるべきです。

 

【夫婦カウンセラーとしての見解】

 

まず、夫が不倫をしていたことは、ショックだと思いますし、不貞相手に対し思うところがあることも理解できます。

 

しかし、ここであなたが違法行為をしてしまったら、それこそ、不貞相手と同じことをしていることになりませんか。

 

それに、会社に事情を漏らすことによって、かえって、夫は不倫相手側をかばおうと、あなたから離れてしまうかもしれません。

 

不倫が発覚したとき、まず行うべきは、パートナーに対して、今後どうして行きたいと思っているのか、そして、どうして不倫をしてしまったのかを、ちゃんと話させることです。

 

もちろん、一朝一夕でできることではありません。最初は、正直には話さないかもしれません。

 

そこを、時間をかけて、しっかりと向き合っていかなければ、問題点が見えず、真の解決にはなりません。

 

それでも、やはり難しいということであれば、ぜひ一度ご相談ください。

弁護士という違った立場から夫に対し話を聞くことで、新たなポイントが見つかるかもしれません。

 

まとめ

・会社に暴露をするべきではない

・暴露したら、罪に問われたり、損害賠償請求される恐れがある

・まずは、パートナーに対して、不倫をした理由や、今後についてしっかり話をさせること

・それが難しいという場合は、ご相談ください


対応弁護士兼夫婦カウンセラー
小林 聖詞
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