浮気を突き止めた探偵費用も浮気相手に請求できる?

浮気(不貞)に関する請求のご相談で、お話をよく聞くのが、

「浮気の証拠を確保するために、探偵に依頼したのですが、どこまで調査をした方がいいですか?」

「探偵費用が高額になったのですが、浮気相手から回収できますか?」

といったご相談です。

探偵費用については、2~30万円位で収まる方から、100万円以上、数百万円かかる方まで、千差万別です。

人によっては、かなり高額な探偵費用がかかっています。 

そこで、浮気(不貞)の慰謝料を請求するときに、こういった探偵費用(調査費用)の請求も併せて認められるのか、説明していきます。

法律上の考え方

まず、民法は、以下のとおり、「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害」されたことによって「生じた損害」が賠償の対象となるとしています。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法709条

そして、単に、浮気があったから、というだけでは、探偵費用は損害には含まれません。

原告は調査費用73万6032円をも損害として請求するが,調査費用は不貞関係の把握のために有効であることは確かであるとしても,一般に不貞行為という不法行為から生ずる費用とまでは言い難く,相当因果関係があるとは認め難い。

東京地裁平成29年12月19日判決

原告は,探偵に行動調査を依頼した費用を損害として主張する。しかし,一般に証拠収集費用が権利や法律上保護される利益の侵害により生じる不利益であるとは直ちに評価し難い。また,不貞行為は,性行為の有無という単純な事実であって,その存否及び関係者の確定のために専門的知見に基づく調査,判断が必要とはいえない。したがって,調査費用は,本件の不貞行為により通常生ずべき損害とは認められない。

東京地裁令和 3年10月29日判決

このように、探偵費用が、侵害(浮気・不貞行為)によって「生じた損害」といえるためには、一般的に、相当因果関係がある、すなわち、損害賠償請求のために必要であり、かつ相当である(必要性・相当性)ということまで証明しなければならないのです。

そのため、まずは、探偵費用は当然には請求できるものではない、ということにご注意ください。

必要性

ここで、探偵費用の必要性について判断した、いくつかの裁判例を見てみましょう。

原告としては,被告の氏名が本名かどうかも分からず,その素性も明らかでなかったことから,これを明らかにするために探偵社に調査を依頼したものであり,その調査により,被告とAが一緒に旅行した際の状況や,被告の自宅にAが一晩滞在した際の状況などが明らかになったものであって,かかる調査は,被告による不貞行為の存在を立証するための調査として必要性のあったことは明らかというべきである。

東京地裁平成20年12月26日判決

各事実を確認できたのは本件調査会社による調査の結果であり,同調査は本件にとって不可欠のものであったといえる。そして,本件調査会社によるAの行動確認が平成29年8月10日から同年9月11日までのうちに12日間行われたこと(甲2)や,原告がこの調査のための着手金及び調査料として合計235万円を本件調査会社に支払ったこと(前提事実(3)),上記(1)のとおりの慰謝料額なども考慮すると,本件調査会社に支払った費用のうち100万円をもって相当因果関係ある損害と認める。

東京地裁令和 3年 7月13日判決

原告は,Aの不貞行為の調査を探偵会社に依頼し,その費用として205万9140円を支払ったことが認められるが,そのような調査を探偵会社に依頼して行う必要性があるとは当然にはいえず,本件につき特にそのような必要性があったことを認めるに足りる証拠はない。

東京地裁令和 3年11月26日判決

本件においては,原告が,探偵による調査を利用しなければ,被告とAとの不貞行為を把握することができなかったということはできない。
したがって,証拠収集のために支出した調査費用については,被告の不法行為と相当因果関係にある損害と認めることはできない。

東京地裁令和 2年 9月15日判決

このように見ていくと、探偵費用の必要性というのは、事実上、探偵に依頼しなければ,不貞行為を確認できなかったというレベル、すなわち必要不可欠であるというレベルまで求められていることが分かります。

相当性

裁判所は、探偵費用について、かなり高額であると考えている傾向にあります。そのため、探偵に依頼することが必要不可欠があったとしても、依頼する範囲が広すぎる場合や、金額が高すぎる場合は、相当性を欠くとして、費用全額は認めないとすることがあります。

調査費用99万円(税込み)についても,あまりにも高額であり,これを全額認めるのは相当といえない。

東京地裁令和 3年 9月17日判決

原告は,探偵業を営む会社にAの行動調査を依頼し,その費用として49万5000円を支払ったことが認められる。原告は,Aの携帯電話内の情報を見て,本件不貞行為の存在を疑ったものの,被告の住所等を特定することはできなかったことや,本件事案の内容等に照らすと,上記費用のうち20万円の限度で本件不貞行為との相当因果関係を認めるのが相当である。

東京地裁令和 3年12月15日判決

金額について、どのくらいが相当であるかという明確な基準は見当たりませんが、3桁を超える金額が認定されるケースは、あまりないように思われます。

まとめ

以上より、浮気を突き止めた探偵費用も浮気相手に請求できるかといえば、できないわけではないが、そのハードルが決して低くはない、ということがお分かりいただけたかと思います。

それでも、探偵費用を含めた金額を浮気相手に請求したい、であるとか、自分の状況で探偵費用を請求できるのかが分からなくて困っている、という方は、ぜひ一度ご相談ください。

これまでの1000件以上の相談実績から、適切なご相談や弁護をさせていただきます。


対応弁護士兼夫婦カウンセラー
小林 聖詞
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